Sep 24, 2010
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今夏、電力不足の首都圏で計画停電が避けられない見通しになる中、化学工学に関連する研究者・開発者の学会・化学工学会(会長・中尾真一工学院大学教授)がこのほど、大規模な計画停電を回避するための対策案をまとめ、緊急提言として公表した。
【対策による効果の数字は】
供給力の積み増し、PC利用の工夫やテレビのオフといった節電を徹底しても、ピーク時の電力不足は避けられないとして、さらに休日の分散化や夜間勤務、サーバの移設など、電力需要の「時間的・空間的シフト」に取り組むよう提案している。
●現状では夏の計画停電は避けられない見通し
東京電力は7月末までに供給力を1000万キロワット回復し、合計4650万キロワットまで改善させる計画。だが、空調の利用が増える夏のピーク時間帯となる午後1時〜午後4時には例年、6000万キロワットの需要がある。今夏は節電効果を想定しても5500万キロワットが必要とみており、このままでは計画停電は避けられない。
●課題は「ピーク需要の削減」
化学工学会の提言では、まず「夏の主たる課題はピーク電力需要(キロワット)の削減であり、平均的な電力使用量(キロワット時)の削減では事態の大きな改善が必ずしも期待できない」と指摘。その上で、対策として挙げられる(1)電力供給力の増加、(2)待機電力のように常時発生している電力需要の抑制──に加え、(3)電力需要の時間的シフト・空間的シフトが、大規模な計画停電を回避するために重要になるとした。
供給力の増強では、夏までに太陽光発電で50万キロワット、夜間電力の蓄電で5万キロワット、コジェネレーションシステム(熱電併給システム)の導入で10万キロワット、大型ビルなどの防災用自家発電装置の利用で300万キロワット、合計365万キロワットの積み増しが可能だと試算した。
●BDレコーダーの高速起動モードもオフに
一方、電力需要の削減も欠かせない。提言では省エネ機器の購入や、機器の利用の工夫、ライフスタイルに関わるものまで具体的に挙げている。
▼機器の消費電力削減
・旧式冷蔵庫の買い換え促進──旧式は常時100ワット程度が必要だが、最新型は3分の1程度で済むものもあり、買い換えが進めば60万キロワット程度の削減が可能に
・効率の高い照明への買い換え促進──白熱灯やクリプトン球などの販売を停止し、LEDや蛍光管式などに代替することで20万キロワット程度の削減が可能に
・エアコンは旧式の買い換え促進、フィルター掃除推奨──エコポイント制度継続による省エネな新型エアコンへの代替を進めるとともに、空調効率を上げるフィルター掃除を推奨することで、50万キロワット程度の削減が可能に
・電気空調をガスヒートポンプに──電気式空調のガスヒートポンプへの代替に助成するなどして導入が進めば40万キロワットの削減が可能に
▼ライフスタイル・行動の変化
・自販機の夏季またはピーク時間帯の停止──本当に必要なものを除き、少なくとも温度調節の停止を呼びかけることで25万キロワット程度の削減が可能に
・PC利用の工夫──デスクトップPCはディスプレイと合わせ150ワット程度を消費するため、ピーク時間帯にはシャットダウンし、ノートPCをバッテリー駆動で利用する。省電力型ノートの導入や、デュアルディスプレイのうち1台を使用しないことも有効。100万人が協力することで15万キロワットの電力削減が期待できる
・ピーク時間帯の電車の間引き運行──ピーク時間帯の電車本数を減らすことで20万キロワットの削減が可能に。夏季のピーク時間帯は通勤・通学のピークとかぶらないため、影響は少ないと考えられる
・待機電力の削減──Blu-ray Discレコーダーの瞬間起動モードのために必要な待機電力は10〜20ワット。こうしたモードの解除やコンセントを抜くことなどで、10万キロワット程度の削減が可能に
・テレビ視聴の停止──省電力な液晶テレビなどが普及したが、それでも100ワット程度は消費する。電力ピーク時にテレビ局が「テレビを消すことで節電に協力できます」などのテロップを表示し、節電を呼びかけ、全世帯の20%が協力すれば最大40万キロワットの削減が可能。画像だけを消す消画モードで音声だけ聞くことでも、消費電力を半減できる
これらの省エネ・節電効果は合計で280万キロワット。ただ、供給力の365万キロワットと合わせても、東電の需要想定5500万キロワットには届くか届かないか。例年のピーク、6000万キロワットはまかなえない。
^サーバ移転、シェスタ奨励──時間・空間シフト
●夜間勤務、長い昼休み、サーバ移転
そこで重要になるのが電力需要の時間的・空間的シフトだ。以下の時間的シフトで670万キロワット、空間的シフトにより95万キロワット、合計765万キロワットのピーク需要を削減できると試算している。IT企業や企業のIT部門にとって重要な提言も含まれている。
▼時間的シフト
・休日シフト──平日と比べ週末は供給能力に余力がある。各業界の前面的な協力により、通常は土曜・日曜の休日を、夏季だけ月曜・火曜、水曜・木曜などとシフトすることで270万〜320万キロワット程度の削減効果がある
・勤務時間シフト──昼間だけ稼働している工場・研究所を夜間運転・夜勤に切り替えたり、大学では深夜研究・夜間授業などに切り替えることで、200万人相当がシフトすれば300万キロワットの削減効果。深夜勤務手当や減税、交通機関の深夜運行などが求められる
・シェスタや在宅勤務の推奨──昼夜逆転が難しい職種などは、昼休みをピーク時の2〜3時間にしたりするなどして100万キロワット程度の削減が可能。在宅勤務により勤務時間の裁量を広げることも有効
▼空間的シフト
・サーバなどを西日本や北海道へ移設──どこにあってもOKなサーバなどを電力に余裕のある地域に移設することで30万キロワット程度の削減を期待
・単身赴任ではなく、家族で移住──電力に余裕がある地域に生産を移すメーカーの動きがあるが、その際従業員は単身赴任ではなく、家族で引っ越すことを奨励することで、50万人が引っ越せば最大50万キロワット、100万人なら最大100万キロワットが削減できる
・国内外の留学、インターン促進──大学・大学院生などが電力に余裕がある地域の大学で学んだ単位を認めたり、海外留学、国内外の企業でインターンを奨励するなどして10万人が移動すれば最大10万キロワットの削減が見込める
・他地域への観光誘導──夏季の長期休暇取得を奨励、各地の地域振興と連携して観光を誘導し、定常的に5万人の旅行者があれば最大5万キロワットが削減できる
●電力需要データのリアルタイム開示も要請
提言では、これらは議論の余地はあるものの、大規模な計画停電を極力回避するには、電力需要の時間的・空間的シフトが不可避だとした。「提案した方策は、明日から容易にできることと少し時間がかかるもの、大きな努力や仕組みづくりが必要なものを含んでいるが、過度のガマンや経済の停滞を伴わずに夏のピーク電力に対応するための指針となるものと信じる」としている。
また電力需要データのほぼリアルタイムな開示に加え、いつまでシフトを続ければ良いのか、電力供給の中長期的な見通しを提示して企業や国民に指針を提供することが重要だとしている。
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